「電磁波」と聞くと、多くの人は「TVやパソコン、スマホから出ている電波」を
思い浮かべるのではないでしょうか。
たしかにそれも間違いではないですが、上記はたくさんある電磁波の中の、
ごく一部でしかありません。
家の中、職場、電車内や道路などの街中を含めて、
私たちの周りには何種類もの電磁波であふれています。
そもそも電磁波って何?
電磁波とは、電気と磁気の両方の性質をもつ光と同じ速さで伝わっていく
波のことをいいます。
電気が流れるところには、必ず電磁波が生まれます。
この電磁波ですが、周波数(※)という1秒間に生じる
波の数の違いで種類が変わります。
例えば、周波数の高いものからいうと、
放射線(ガンマ線、X線など)
光の仲間(紫外線、可視光線、赤外線)
電波(携帯電話、TV放送、ラジオ放送など)
があります。
またこの他に、
周波数が非常に低い電磁波のことを「超低周波」といい、
送電線や家庭用の電化製品から発生している電磁波は、これにあたります。
電磁波の伝わり方
たくさんの種類がある電磁波ですが、
空間を移動していく仕組みは同じです。
電磁波は水面に生じる波のような性質をもっています。
池にものを投げ入れると波紋が広がります。
投げ入れた瞬間に図1のAの波ができ、その1秒後には
波が図2のBの位置まで進みます。
電磁波も同じように空間を進んでいきます。
この時、空間を伝わっていく波を作っているのは
「電界」と「磁界」と呼ばれるもので、
この二つが働きあってからみ合いながら、
電磁波は空間を進んでいきます。
電界とは
電気にはプラスとマイナスの極性があります。
異なる極性のものは引き合い、同じ極性のものは反発します。
このような電気の力が働いている場所を電界といいます。
磁界とは
磁石にはN極とS極があり、異なる極のものは引き合い、
同じ極のものは反発します。
このように、磁気の力が働く場所を磁界といいます。
周波数によって変わる電磁波の性質
電磁波は周波数によって、性質が大きく異なります。
暖房器具が発する赤外線は暖かく感じる性質を持っています。
可視光線はヒトや動物が認識できる電磁波です。
紫外線には殺菌作用や日焼けを起こす作用がありますし、
X線は物を透過する性質があり、X線撮影などに用いられます。
自然界における電磁波の発生源としてよく知られているのは、
太陽です。
太陽から発せられた電磁波のうち10MHzから300MHzあたりの電波と、
300THz(テラヘルツ)から1000THzあたりの可視光線は、
大気や電離層※を通り抜けて地上に届くことが知られています。
■周波数による電磁波の分類
電磁波の用途
(1)電波
赤外線よりも波長の長い電磁波を総称して、電波と呼びます。
長波(LF):船や飛行機の無線に使われている。
中波(MF):国内のAMラジオ放送に使われている。
短波(SF):遠距離のラジオ放送、いわゆる短波放送に使われている。
超短波(VSF):テレビやFMラジオ放送に使われている。
極超短波(UHF):テレビ放送、携帯電話、電子レンジに使われている。
センチ波(SHF):レーダーや衛星放送に使われている。
ミリ波(EHF):レーダー、衛星通信、電波望遠鏡に使われている。
サブミリ波:近くの無線、電波望遠鏡、医療用画像などに使われている。
(2)赤外線
赤外線は、赤外線写真や映像、そして暖房器具などに使われています。
一般的に温度の高い物体、例えば太陽などから放射されます。
赤外線が物体に当たると、吸収されて熱に変換されます。
そのため、赤外線のことを熱線と呼ぶこともあります。
これを応用すると、誘導ミサイルなどを作ることができます。
(3)可視光線
可視光線は私たちが目で実際に感知できる光です。
赤外線に近い方、つまり波長が長い可視光線は赤色です。
逆に紫外線に近いほう、つまり波長が短い可視光線は紫色です。
その間の波長は、いわゆる虹のように青や緑といったさまざまな色として認識されます。
人によっては多少見える波長、周波数帯が違うようです。
またよく言われているのは、女性の方が波長の違いを見極める、
言い換えると色を識別する能力が高いと言われています。
(4)紫外線
紫外線はいわゆるウルトラバイオレット(UV)のことです。
時折勘違いしている人も見受けられますが、赤外線同様目で見ることはできません。
ただし、一部の動物や昆虫などは、紫外線を使って物を識別しています。
日焼けに代表されるように、人間の皮膚などへの悪影響が指摘されるようになっています。
それを応用して、殺菌や化学反応などに使われています。
(5)X線
X線はいわゆるレントゲン写真で使われる光線です。
透過力が強い性質を利用して、医療分野で利用されています。
ただし大量に浴びすぎると、細胞を破壊することもあります。
(6)ガンマ線
ガンマ線は放射線の一種であり、医療、食品分野に使われています。
エックス線と同様に透過力の非常に強い電磁波です。
そのため鉛などでできた厚い板でないと進行を止めることができません。
電波と放射線
電磁波は大きく「電離放射線」と「非電離放射線」の2種類に分けられます。
電離放射線
紫外線の一部やX線とガンマ線などの周波数が3000THz(テラヘルツ)以上の電磁波は、
強い量子エネルギーを持っていることから、原子の中から電子を弾き飛ばす
電離(イオン化)作用を引き起こすので、電離放射線とも呼ばれています。
電離した原子によって、遺伝子が傷つけられることが分かっており、
この遺伝子損傷によって細胞がガン化する場合があると考えられています。
非電離放射線
周波数が3THz以下の電波は、
原子の中から電子を弾き飛ばすエネルギーを持っていないため、
X線とガンマ線のような電離作用を引き起こすことはありません。
このため、電波を含む3000THz以下の電磁波は非電離放射線とも呼ばれています。
まとめ
「電磁波」と一口にいっても、
波長(周波数)に応じてさまざまな種類があることが
わかっていただけたかと思います。
波長(種類)と波の大きさ(強さ)によって性質が大きく異なり、
目的に応じて使い分けられています。
また、電磁波といえば健康への影響が気になるところですが、
現段階では生活環境での電磁界による
健康への影響があるという確実な証拠は見つかっていません。
しかし、確実に影響がないという証拠もないため、
疫学研究(統計的に関連性を調査)および各種実験(動物、細胞など)が
さまざまな機関で実施されています。